機能性材料の設計では、密着性や靭性、分散安定性、軽量化、発泡・剥離制御など、複数の要求を同時に考慮する必要があります。一つの特性を高めることで、粘度、加工性、外観、保管安定性など別の特性に影響が生じる場合もあり、ベース樹脂や従来の処方だけでは目標とするバランスを得にくいことがあります。
積水化学は、樹脂改質に用いられるS-LEC(エスレック)™ BKシリーズと、加熱によって膨張するADVANCELL(アドバンセル)™という異なる材料アプローチを通じて、用途や工程条件に応じた配合設計を支援します。本ページでは、各製品の特長、想定用途、選定時の確認項目、評価の進め方をご紹介します。
材料設計では、目標とする性能を高めることで、別の性能や工程に影響が生じる場合があります。
例えば、エポキシ系材料では硬さや接着性を維持しながら、割れにくさや応力緩和性を確保することが課題になります。CFRP用マトリックス樹脂では、層間靭性に加えて、含浸性、粘度、タック性など成形工程に関わる条件も考慮しなければなりません。また、コーティングや接着剤では基材への密着性、分散安定性、塗工性、表面状態のバランスが、熱剥離用途では工程中の保持性と加熱後の剥離性が重要です。
要求特性と加工条件を整理し、適切な作用機構を持つ材料を選ぶことが、候補処方を効率的に絞り込む第一歩となります。
S-LEC™ BKシリーズとADVANCELL™は、異なる作用機構によって材料設計を支援します。
S-LEC™ BKシリーズはポリビニルアセタール樹脂の分子構造や官能基を活かし、エポキシなどの熱硬化性樹脂における靭性、界面接着性、応力緩和性、粘度などの調整に用いられる改質材です。
ADVANCELL™は、加熱によってシェルが軟化し、内包成分の膨張により気泡を形成する熱膨張性微粒子です。粒径や発泡温度などが異なるグレードから、工程温度と目標機能に応じて選定できます。軽量化、クッション性の付与、表面設計、加熱による剥離力制御など、目的に応じた材料設計をご検討いただけます。
候補グレードの選定では、目標とする性能だけでなく、使用する樹脂や溶剤、硬化条件、加工温度など、実際の処方・工程条件を確認することが重要です。
S-LEC™ BKシリーズは、ベース樹脂との相溶性、分子量、水酸基量、溶解性、粘度への影響などを確認しながら候補を絞り込みます。ADVANCELL™は、工程温度と発泡開始温度の関係、粒径、求める発泡状態、分散方法、供給形態などが主な選定項目です。
積水化学では、用途、現在の処方、目標特性、評価方法をご共有いただいたうえで、候補グレードと評価の進め方をご提案します。実処方に近い条件でサンプルを評価し、適用可能性をご確認ください。
自動車・建材・産業機器向けのコーティング、接着剤、シール材において、基材密着性、分散安定性、軽量化、表面平滑性の同時成立が求められていた事例です。S-LEC™ BKシリーズを塗工・接着用途のバインダーとして、ADVANCELL™をシール材・エラストマーの軽量化と均一発泡用途として組み合わせることで、用途ごとに最適化された配合設計を支援した例です。
航空機・自動車・産業機器向けのCFRP部材で、層間剥離やクラック進展に加え、プリプレグ工程でのタック性・粘度・保管安定性が課題となっていた事例です。エポキシ系マトリックスにS-LEC™ BKシリーズを改質材として配合し、界面接着性と層間破壊靭性を高めつつ、含浸性とタック性を両立する設計を実現。耐衝撃性と成形性のバランス確保に活用されています。
金属、樹脂、ガラスなど線膨張係数の異なる基材を接着・封止する用途で、熱サイクル後のクラックや界面剥離が課題となっていたケースです。エポキシ処方にS-LEC™ BKシリーズを添加することで、硬さを維持しながら靭性と応力緩和性を調整。当社評価条件下では、未添加品比で耐衝撃性が約3倍向上することが示されており、接着強度を犠牲にせず耐久性改善を狙う配合検討に活用されています。
半導体ウエハーや電子部品の薄型化・小型化に伴い、工程中の保持性と加熱後の剥離性、被着体への低負荷化を同時に満たすテープ設計が求められていた事例です。粘着剤にADVANCELL™を配合し、加熱発泡をトリガーとして粘着層内部から剥離力を低下させる設計を採用することで、糊残りや表面ダメージを抑えつつ、安定した工程通過と剥離を両立します。
Q. 機能性添加剤とは何を指しますか?
A. ベース樹脂単独では成立しにくい性能・加工性・信頼性のバランス設計を支援する材料を指します。具体的にはS-LEC™ BKシリーズ(PVB系改質材)やADVANCELL™(熱膨張性マイクロスフェアー)などを、改質材・バインダー・機能性微粒子として提案しています。
Q. どの用途にどの製品を選べばよいですか?
A. 靭性・接着性・分散性・レベリング性を活かしたい場合はS-LEC™ BKシリーズ、軽量化・発泡制御・剥離力制御を狙う場合はADVANCELL™が候補となります。用途、基材、溶剤、加工条件、目標特性を共有いただければ、適切な候補グレードをご提案します。
Q. 既存のエポキシやアクリルなどの処方にそのまま組み込めますか?
A. 相溶性は使用樹脂、硬化剤、溶剤、添加量、工程条件によって異なります。実処方に近い条件での事前評価を推奨しており、当社では候補グレードの選定から評価条件のご相談まで対応しています。
Q. S-LEC™ BKシリーズはどのような効果が期待できますか?
A.代表的な効果として、靭性・界面接着性・応力緩和性の調整、耐衝撃性の向上、CFRPでの層間破壊靭性改善、エポキシ硬化物の割れにくさ改善などが挙げられます。効果は配合・評価条件により変動するため、個別評価をお願いしています。
Q. ADVANCELL™を使う際、工程中に意図せず発泡してしまうリスクはありますか?
A. 工程温度と発泡開始温度の設計余裕が不十分な場合、保管・加工・搬送時の熱履歴で意図しない微発泡が起き、剥離力や品質に影響する可能性があります。実プロセス温度に対して十分な余裕を持つグレード選定が重要です。
Q. サンプル依頼時には、どのような情報を伝えればよいですか?
A. 用途、基材、溶剤、ベース樹脂・硬化剤、配合比、加工温度・硬化条件、目標特性、現在の課題を共有いただくと、候補グレードや評価の進め方をご提案しやすくなります。発泡用途では工程温度・剥離温度・許容糊残りも重要です。